彼と彼と彼女の出会い /コナン
新K+蘭
怪盗と蘭のコンビが結構好きなので絡ませてみました。
新一と蘭は幼馴染のままです。
江戸川コナンから工藤新一の身体に戻り、初めての夏がやってきた。
ずっと待たせてしまっていた幼馴染は結局未だに幼馴染のまま、なんとなく落ち着いた雰囲気で足踏みしていたその関係はいつしか落ち着いたままで終着した。
事件と単位獲得の為の補習の日々を忙しいながらも穏やかに過ごし、ようやく訪れた夏休みのとある日。
その出会いは、起こるべくして起こったのかもしれない。
前々から約束していた映画を毎度の如く事件ですっぽかし、埋め合わせとして新しく出来た店の開店セールに付き合わされ、これなら映画を見とけばよかったなぁと内心疲れながらもしっかりと幼馴染を家まで送り届けていた最中。
蘭の声に顔を上げると、やけに見覚えのある白い三角が視界の先を飛んでいた。
「ねぇ、あれ、怪盗キッドじゃない?」
「バーロォ。今日は予告日じゃねぇだろ?どうせビニールの袋かなんかだよ」
「でも・・・それにしては三角すぎない?」
「・・・・・・・・・・・・・」
2人して立ち止まり、遠くの夜空を飛んでいく白い何かを凝視する。
白い怪盗にしては妙に飛行が不安定なのでビニール袋だろうと最初は思ったが、よく目を凝らして見ているうちに、確かにあれは白い怪盗のハンググライダーのようにも見えてきた。
「・・・。ワリィ、蘭。ちょっと行ってくる」
「あ、ちょっと!新一!?」
「事務所はもう目の前だろ?じゃ、気を付けてな!」
「もうっ!新一ー!」
蘭の声を背中で聞きながら手を振りつつも、意識は既に遠くを飛んでいる白い怪盗らしきものに向かって走っていた。
もしあれが本当に怪盗であったなら飛び方が不安定過ぎる。
何やら嫌な予感がした。
走りながらも目だけで白い三角を追っていると、途中で不自然に三角が方向を変えた。
新一がそれに驚く間もなく、白い三角は唐突に下方に向かってスピードを上げる。
「!あのヤロー、やっぱり何かあったな…っ」
あの不自然な動きからして、撃たれたのか?と考えた瞬間一気に青ざめた。
最悪、飛んでいる最中に意識を失ったのだとしたら、いくらあの怪盗とはいえ命が危ない。
走る速度を更に上げて、怪盗が落ちたであろう場所を公園だと検討を付けて走った。
息を切らしながら公園に辿り着き園内を見渡す。
すると不自然に枝が折れた木を発見し、その下の茂みの中をのぞき込むと、予想通りの白い衣装を纏った怪盗がぐったりとしていた。
「ッ!?」
条件反射で咄嗟に携帯を取り出して119を押しかけ、しまったと舌打ちする。
コイツは民間医療の治療が受けられない。
ならば、と咄嗟に阿笠博士の家に電話を入れた。
就寝準備に入っていたらしい博士をすぐさま呼び出し、手短に要件だけを伝えて急いでくれ、とだけ頼んで通話を切った。
灰原を連れて直に駆けつけてくれるだろうと確信しながら、新一は怪盗のそばに跪いて顔を覗き込んだ。
壊れたハンググライダーがすぐ真上の枝に引っかかっており、怪盗に纏わりついているようなベルトを慎重に取ってやる。
怪盗は木にもたれ掛かって座りこんでおり、いつも自分を不適に見透かしているような青い瞳を固く閉じてピクリとも動かない。
「おい、キッド。大丈夫か?」
「・・・・・・・名・・・探・・・偵?」
力無くうなだれていた頭を僅かに上げ、怪盗は掠れた声を億劫そうに絞り出しながら名前を呼んだ。
うっすらと開かれた瞳は微かに潤んでいたが焦点は合っているようだ。
怪盗の意識がこちらを向いた事に、一時とはいえ新一はホッと安堵した。
「撃たれたのか?」
「掠っただけだけどな・・・・・」
飛んでる時に止血も済ませた、とサラッと言っているいつもの怪盗の様子に思わず頭が痛くなってくる。
防弾チョッキを着てたから胸に弾が貫通するのは免れた、と言われた瞬間青くなって更に頭が痛くなった。
現場に血を残こさないように、血液を溶かして透明化させる特殊な溶剤を吹きかけているから外見上は血液が見えないけれど、調べればルミノール反応は出るだろう。
血を落とすようなヘマはしていないはずだが、明日確認しに行かなきゃなぁ、とやけに暢気な口調で、ぼんやりとした瞳を閉じて呟く怪盗の頭を引っ叩けるものなら引っ叩きたい。
だからあんなフラフラしながら飛んでいたのか。
「バーロォ!防弾チョッキ着てるからって骨にヒビが入ってたらどうするんだよ!このままでいいからジッとしてろ。さっき博士達を呼んだから。もうすぐ迎えが・・・・」
来る、と言いかけて、背後に近づいてきた気配に新一は息を飲んだ。
「キッド!?」
その瞬間。
先ほど帰ったはずの幼馴染の心配そうな声が、この場合絶対にこの場にいてはならないはずの声が聞こえて、振り返る事ができず新一は硬直した。
「・・・・・・・めいたんてい・・・・・・・・」
ジトッと睨む怪盗に、新一はなんの反論も言い訳も謝罪も思いつかず・・・。
怪盗の目が「どういうことか?」と痛いほど問いかけてくる。
怪盗とは別の意味で蒼白になり冷や汗を垂らした。
(なんでついて来てるんだよっ、蘭ーーーッ!!)
「ちょっとっ、新一どういうことなの!?キッド、大丈夫!?」
「あー、あー、蘭、これは・・・」
あぁ、いっそこの蘭が怪盗の変装だったら・・・と思わず現実逃避する新一だった。
「私は目の前にいますから・・・・・・」
口に出していたのか怪盗が新一の現実逃避に現実を突きつけ、ハァ・・・とため息を吐いた。
そのため息に込められた「しょうがないなぁ」と言わんばかりのニュアンスを汲み取って、新一は心の底から怪盗に対して申し訳なく思う。
蘭に聞こえないように、スマンと小声で呟いて軽く項垂れた。
ゴディバのチョコでも今度食わせてやろう。と心の中だけで思いながら。
怪盗は緩やかな動作ながらも体を起こし(途中で若干息を詰めたのを間近にいた新一だけが気付いたが)、持てる全てのバイタリティを絞り出して蘭に向かってふんわりと笑みを浮かべた。
「御心配は無用ですよお嬢さん。暑さにやられて、少し眩暈がしただけですから」
思ったよりもしっかりした声が出て我ながら感心する怪盗であったが、蘭の表情は少しも変わらずに心配の色を浮かべている。
優しい子だなぁと苦笑を浮かべ、このままでは紳士失格だと怪盗は気力を振り絞った。
痛めていない方の腕を持ち上げ、蘭の目の前でポン!と生花を差し出す。
「美しい女性には、そのような顔は似合いません。どうか笑ってください。そして出来ることならば、今宵の事はどうか御内密に・・・」
「え・・・・」
戸惑いながらも成り行きで花を受け取ってしまった蘭は、ニコリと笑う怪盗の笑顔を直視してしまい、思わず頬を染めた。
「見逃しては、頂けませんか?」
穏やかに、にこやかに、優雅な口調でやんわりと伝える。
これで蘭が安心してくれれば、あとはどうにでもなる。
怪盗の意図を汲み取り、その手腕に舌を巻いている新一であった。
「さ、というわけで名探偵。蘭さんを送って行って差し上げなさいな」
「・・・・・へ?」
「工藤探偵は、女性をこのような時間に一人歩きさせるおつもりですか?」
ビシリと笑顔の仮面を貼り付けたまま、怪盗は探偵を追い払うような仕草で手をシッシッとやっていた。
オレまで追い払う気かテメェは!
「バーロォ!探偵がコソ泥を見逃すわけねぇだろ!?」
「ちょっと新一!?」
何故か咎めるような口調で蘭が怪盗を庇うように割って入るのに勢いを殺がれ、新一は複雑な心境でその場で蹈鞴を踏んだ。
「キッド・・・本当に大丈夫なの?」
「はい。暫く休めば大丈夫です」
「でも顔色、あんまり良くないわよ?」
「大丈夫ですから」
押し問答を繰り返す二人の会話はどこまでも平行線だった。
博士に場所は教えてあるし、この怪盗にはやたらと甘い隣家の少女が意地でもこの場所を見つけてくれるだろう。
やれやれと息を吐きながら、新一は蘭の腕を掴んで無理やり立ち上がらせた。
「ほら、帰るぞ」
「新一!?放っとくつもりなの?」
「こんな暑い中そんな嵩張る服を着て動いてる方が馬鹿なんだよ。んなマヌケなコソ泥一人捕まえたってしょうがねぇだろ?」
「新一・・・・!」
「本人が大丈夫だって言ってんだ。ほっといてもソイツは死ぬようなたまじゃねぇよ。キッド、今夜のは貸しだからな」
後半を怪盗に向けて言い放つ。
怪盗は心得たように目を伏せて、手振りだけで新一達を追いやった。
(博士達が来たら、素直に治療させろよ?後で隣まで見に行った時オメーが居なかったら次の現場でぶっ飛ばしてやるからな!絶対に逃げんなよ!?)
睨みつけながら目だけでそう言うと、怪盗はコクコクと首を縦に振っていた。
どうやら声を出すのも億劫らしい。
本来ならばここで逃げないように見張っておきたい所だが、あの様子では暫く動けないだろうと推測される。
良いんだか悪いんだか・・・・と怪盗の悪運の強さを信用していながらも不安を覚えつつ、重い足取りで蘭の手を引っ張った。
「蘭。行くぞ」
「でも・・・・」
ちらりと怪盗を振り返ると、怪盗はもう一度だけ安心させるようにニコリと笑った。
先ほどから怪盗の顔面は蒼白だったが、明かりの足りないこの場所からは判別できない。
もはやあれは怪盗の仮面の一部なのだろう。
いつ何時、いかなる状況にあっても即座に取り出せる笑顔のポーカーフェイス。
その仮面の下の表情を知っているからこそ、ポーカーフェイスを纏っている怪盗を見ているとどうにもイライラする。
そう新一が思っていることを、怪盗自身は知っているのだろうか。
「・・・蘭」
再度呼びかける。
後ろ髪を引かれながらも、ようやく怪盗の傍を蘭が離れようとした時。
公園の前に、ヘッドライトを光らせた見覚えのありすぎる車が停車した。
一目散にこちらに駆け寄ってくる二つの人影に、新一と怪盗はガックリと深く深く肩を落としたのである。
「怪盗さん!工藤くん!」
「新一!キッドくん!大丈夫か!?」
怪盗がケガをして公園に落ちた、と連絡を受けてすぐさま家を飛び出してきた二人は、目の前の光景に瞬時に目を丸くした。
思いっきり項垂れている新一と怪盗。
そして、何故か新一の幼馴染である蘭が驚いた顔をしてこちらを見ていた。
顔を手で覆っている新一になんんとなく状況を察したものの、状況が状況だけに微妙な空気が漂う。
「・・・・・・・タイミングが悪かったようだけれど、私達は悪くないわよ?」
一応、という感じで灰原が言うと、新一は項垂れた恰好のまま力なく「おう・・・」と返すのがやっとだった。
end
――――――
続くかもです。
怪盗と蘭のコンビが結構好きなので絡ませてみました。
新一と蘭は幼馴染のままです。
江戸川コナンから工藤新一の身体に戻り、初めての夏がやってきた。
ずっと待たせてしまっていた幼馴染は結局未だに幼馴染のまま、なんとなく落ち着いた雰囲気で足踏みしていたその関係はいつしか落ち着いたままで終着した。
事件と単位獲得の為の補習の日々を忙しいながらも穏やかに過ごし、ようやく訪れた夏休みのとある日。
その出会いは、起こるべくして起こったのかもしれない。
前々から約束していた映画を毎度の如く事件ですっぽかし、埋め合わせとして新しく出来た店の開店セールに付き合わされ、これなら映画を見とけばよかったなぁと内心疲れながらもしっかりと幼馴染を家まで送り届けていた最中。
蘭の声に顔を上げると、やけに見覚えのある白い三角が視界の先を飛んでいた。
「ねぇ、あれ、怪盗キッドじゃない?」
「バーロォ。今日は予告日じゃねぇだろ?どうせビニールの袋かなんかだよ」
「でも・・・それにしては三角すぎない?」
「・・・・・・・・・・・・・」
2人して立ち止まり、遠くの夜空を飛んでいく白い何かを凝視する。
白い怪盗にしては妙に飛行が不安定なのでビニール袋だろうと最初は思ったが、よく目を凝らして見ているうちに、確かにあれは白い怪盗のハンググライダーのようにも見えてきた。
「・・・。ワリィ、蘭。ちょっと行ってくる」
「あ、ちょっと!新一!?」
「事務所はもう目の前だろ?じゃ、気を付けてな!」
「もうっ!新一ー!」
蘭の声を背中で聞きながら手を振りつつも、意識は既に遠くを飛んでいる白い怪盗らしきものに向かって走っていた。
もしあれが本当に怪盗であったなら飛び方が不安定過ぎる。
何やら嫌な予感がした。
走りながらも目だけで白い三角を追っていると、途中で不自然に三角が方向を変えた。
新一がそれに驚く間もなく、白い三角は唐突に下方に向かってスピードを上げる。
「!あのヤロー、やっぱり何かあったな…っ」
あの不自然な動きからして、撃たれたのか?と考えた瞬間一気に青ざめた。
最悪、飛んでいる最中に意識を失ったのだとしたら、いくらあの怪盗とはいえ命が危ない。
走る速度を更に上げて、怪盗が落ちたであろう場所を公園だと検討を付けて走った。
息を切らしながら公園に辿り着き園内を見渡す。
すると不自然に枝が折れた木を発見し、その下の茂みの中をのぞき込むと、予想通りの白い衣装を纏った怪盗がぐったりとしていた。
「ッ!?」
条件反射で咄嗟に携帯を取り出して119を押しかけ、しまったと舌打ちする。
コイツは民間医療の治療が受けられない。
ならば、と咄嗟に阿笠博士の家に電話を入れた。
就寝準備に入っていたらしい博士をすぐさま呼び出し、手短に要件だけを伝えて急いでくれ、とだけ頼んで通話を切った。
灰原を連れて直に駆けつけてくれるだろうと確信しながら、新一は怪盗のそばに跪いて顔を覗き込んだ。
壊れたハンググライダーがすぐ真上の枝に引っかかっており、怪盗に纏わりついているようなベルトを慎重に取ってやる。
怪盗は木にもたれ掛かって座りこんでおり、いつも自分を不適に見透かしているような青い瞳を固く閉じてピクリとも動かない。
「おい、キッド。大丈夫か?」
「・・・・・・・名・・・探・・・偵?」
力無くうなだれていた頭を僅かに上げ、怪盗は掠れた声を億劫そうに絞り出しながら名前を呼んだ。
うっすらと開かれた瞳は微かに潤んでいたが焦点は合っているようだ。
怪盗の意識がこちらを向いた事に、一時とはいえ新一はホッと安堵した。
「撃たれたのか?」
「掠っただけだけどな・・・・・」
飛んでる時に止血も済ませた、とサラッと言っているいつもの怪盗の様子に思わず頭が痛くなってくる。
防弾チョッキを着てたから胸に弾が貫通するのは免れた、と言われた瞬間青くなって更に頭が痛くなった。
現場に血を残こさないように、血液を溶かして透明化させる特殊な溶剤を吹きかけているから外見上は血液が見えないけれど、調べればルミノール反応は出るだろう。
血を落とすようなヘマはしていないはずだが、明日確認しに行かなきゃなぁ、とやけに暢気な口調で、ぼんやりとした瞳を閉じて呟く怪盗の頭を引っ叩けるものなら引っ叩きたい。
だからあんなフラフラしながら飛んでいたのか。
「バーロォ!防弾チョッキ着てるからって骨にヒビが入ってたらどうするんだよ!このままでいいからジッとしてろ。さっき博士達を呼んだから。もうすぐ迎えが・・・・」
来る、と言いかけて、背後に近づいてきた気配に新一は息を飲んだ。
「キッド!?」
その瞬間。
先ほど帰ったはずの幼馴染の心配そうな声が、この場合絶対にこの場にいてはならないはずの声が聞こえて、振り返る事ができず新一は硬直した。
「・・・・・・・めいたんてい・・・・・・・・」
ジトッと睨む怪盗に、新一はなんの反論も言い訳も謝罪も思いつかず・・・。
怪盗の目が「どういうことか?」と痛いほど問いかけてくる。
怪盗とは別の意味で蒼白になり冷や汗を垂らした。
(なんでついて来てるんだよっ、蘭ーーーッ!!)
「ちょっとっ、新一どういうことなの!?キッド、大丈夫!?」
「あー、あー、蘭、これは・・・」
あぁ、いっそこの蘭が怪盗の変装だったら・・・と思わず現実逃避する新一だった。
「私は目の前にいますから・・・・・・」
口に出していたのか怪盗が新一の現実逃避に現実を突きつけ、ハァ・・・とため息を吐いた。
そのため息に込められた「しょうがないなぁ」と言わんばかりのニュアンスを汲み取って、新一は心の底から怪盗に対して申し訳なく思う。
蘭に聞こえないように、スマンと小声で呟いて軽く項垂れた。
ゴディバのチョコでも今度食わせてやろう。と心の中だけで思いながら。
怪盗は緩やかな動作ながらも体を起こし(途中で若干息を詰めたのを間近にいた新一だけが気付いたが)、持てる全てのバイタリティを絞り出して蘭に向かってふんわりと笑みを浮かべた。
「御心配は無用ですよお嬢さん。暑さにやられて、少し眩暈がしただけですから」
思ったよりもしっかりした声が出て我ながら感心する怪盗であったが、蘭の表情は少しも変わらずに心配の色を浮かべている。
優しい子だなぁと苦笑を浮かべ、このままでは紳士失格だと怪盗は気力を振り絞った。
痛めていない方の腕を持ち上げ、蘭の目の前でポン!と生花を差し出す。
「美しい女性には、そのような顔は似合いません。どうか笑ってください。そして出来ることならば、今宵の事はどうか御内密に・・・」
「え・・・・」
戸惑いながらも成り行きで花を受け取ってしまった蘭は、ニコリと笑う怪盗の笑顔を直視してしまい、思わず頬を染めた。
「見逃しては、頂けませんか?」
穏やかに、にこやかに、優雅な口調でやんわりと伝える。
これで蘭が安心してくれれば、あとはどうにでもなる。
怪盗の意図を汲み取り、その手腕に舌を巻いている新一であった。
「さ、というわけで名探偵。蘭さんを送って行って差し上げなさいな」
「・・・・・へ?」
「工藤探偵は、女性をこのような時間に一人歩きさせるおつもりですか?」
ビシリと笑顔の仮面を貼り付けたまま、怪盗は探偵を追い払うような仕草で手をシッシッとやっていた。
オレまで追い払う気かテメェは!
「バーロォ!探偵がコソ泥を見逃すわけねぇだろ!?」
「ちょっと新一!?」
何故か咎めるような口調で蘭が怪盗を庇うように割って入るのに勢いを殺がれ、新一は複雑な心境でその場で蹈鞴を踏んだ。
「キッド・・・本当に大丈夫なの?」
「はい。暫く休めば大丈夫です」
「でも顔色、あんまり良くないわよ?」
「大丈夫ですから」
押し問答を繰り返す二人の会話はどこまでも平行線だった。
博士に場所は教えてあるし、この怪盗にはやたらと甘い隣家の少女が意地でもこの場所を見つけてくれるだろう。
やれやれと息を吐きながら、新一は蘭の腕を掴んで無理やり立ち上がらせた。
「ほら、帰るぞ」
「新一!?放っとくつもりなの?」
「こんな暑い中そんな嵩張る服を着て動いてる方が馬鹿なんだよ。んなマヌケなコソ泥一人捕まえたってしょうがねぇだろ?」
「新一・・・・!」
「本人が大丈夫だって言ってんだ。ほっといてもソイツは死ぬようなたまじゃねぇよ。キッド、今夜のは貸しだからな」
後半を怪盗に向けて言い放つ。
怪盗は心得たように目を伏せて、手振りだけで新一達を追いやった。
(博士達が来たら、素直に治療させろよ?後で隣まで見に行った時オメーが居なかったら次の現場でぶっ飛ばしてやるからな!絶対に逃げんなよ!?)
睨みつけながら目だけでそう言うと、怪盗はコクコクと首を縦に振っていた。
どうやら声を出すのも億劫らしい。
本来ならばここで逃げないように見張っておきたい所だが、あの様子では暫く動けないだろうと推測される。
良いんだか悪いんだか・・・・と怪盗の悪運の強さを信用していながらも不安を覚えつつ、重い足取りで蘭の手を引っ張った。
「蘭。行くぞ」
「でも・・・・」
ちらりと怪盗を振り返ると、怪盗はもう一度だけ安心させるようにニコリと笑った。
先ほどから怪盗の顔面は蒼白だったが、明かりの足りないこの場所からは判別できない。
もはやあれは怪盗の仮面の一部なのだろう。
いつ何時、いかなる状況にあっても即座に取り出せる笑顔のポーカーフェイス。
その仮面の下の表情を知っているからこそ、ポーカーフェイスを纏っている怪盗を見ているとどうにもイライラする。
そう新一が思っていることを、怪盗自身は知っているのだろうか。
「・・・蘭」
再度呼びかける。
後ろ髪を引かれながらも、ようやく怪盗の傍を蘭が離れようとした時。
公園の前に、ヘッドライトを光らせた見覚えのありすぎる車が停車した。
一目散にこちらに駆け寄ってくる二つの人影に、新一と怪盗はガックリと深く深く肩を落としたのである。
「怪盗さん!工藤くん!」
「新一!キッドくん!大丈夫か!?」
怪盗がケガをして公園に落ちた、と連絡を受けてすぐさま家を飛び出してきた二人は、目の前の光景に瞬時に目を丸くした。
思いっきり項垂れている新一と怪盗。
そして、何故か新一の幼馴染である蘭が驚いた顔をしてこちらを見ていた。
顔を手で覆っている新一になんんとなく状況を察したものの、状況が状況だけに微妙な空気が漂う。
「・・・・・・・タイミングが悪かったようだけれど、私達は悪くないわよ?」
一応、という感じで灰原が言うと、新一は項垂れた恰好のまま力なく「おう・・・」と返すのがやっとだった。
end
――――――
続くかもです。
by roket503 | 2009-11-27 13:34 | 小説:コナン(読み切)
管理者:ツキト。内容:アニメ、漫画、日々雑。真面目に読むと後悔します。そんなブログ(笑)
by roket503
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